チャイナプラスワンの動きが加速する中、現在次なる投資先で注目されているがASEANだ。 ここ数十年で中国からASEANへ工場進出した会社も少なくはないだろう。 JETROの調べによると2009年以降、対ASEANへの日本の投資額が2013年の上期を含め、4年連続対中国を上回った。 その間に、ASEAN内には高速道路や橋等のインフラも整備され、工場団地も数多く建設された。 現在、メコン圏 (ベトナム・タイ・カンボジア・ラオス・ミャンマー)での日系企業の数はざっと2,500社。 その進化し続けるASEANを、弊社営業マンが実際に現地に出向き、物流インフラ事情について視察を行った。
第一弾は、ASEANの玄関口である中国東莞~ベトナム国境をメインに、ハノイ間の①青のルートの物流インフラ状況についてご紹介したい。
中国東莞~ハノイまではアジアンハイウェイ1号線(AH1)を使った青のルートとなる。 東莞~ベトナム国境までは片側2車線の写真①のような高速道路が整備されている。 まず東莞から南寧までの680kmを、約8時間半を掛けて移動。(平均時速80km/h)
東莞を出て肇庆市までは車の通行量も多く混雑している箇所もあるが、肇庆市を過ぎると車両の数も減り、走りやすい状況が続く。 又、途中トンネルが多く、短い物で数十メートル、長い物になると4キロ以上続くトンネルが10数個ある。
国境まではほぼ山と緑が続くが、南寧のような高層ビル群の都市もあり、かなり発展している様子も伺える。(写真②と③)
南寧で一度休憩を取り、翌日出発。 ベトナムとの国境の町凭祥(Pingxiang)に向かう。 (南寧から凭祥までは約200km)こちらも片側2車線の整備された高速道路だが、南寧~凭祥の間はスロープや急なカーブがあり、60kmに速度制限されている箇所もある。
凭祥の町を出て少し車を走らせると、立派な凭祥総合保税区の建物が迎えてくれる。(写真⑤) ここは中国国内初の陸路国境線上の保税区で、写真⑤は税関ビルとなっている。 全ての手続きがここで行われ、輸出許可をもらい保税区の貨物ターミナルへ移動。(写真⑥) ここからは許可書がないと通行出来ず、重量検査や税関での手続き書類の確認が行われる。
中国ナンバーの車両はベトナムへ入国が出来ない為、この保税区内でベトナムナンバーのトラックへ貨物の積替えが行われる。(写真⑦) 日本の積替え方法や状況と違い、機械を使わず人の手で行われている。(写真⑧)
積替と通関手続きで約3時間。 貨物積替後はベトナム側での輸入通関手続きを済ませ、ベトナム入国となる。しかし整備されている中国側に比べ、ベトナム側はまだまだ未整備な箇所が多い。(写真⑨)
国境からハノイまでは一般道の片側1車線の山道が続き、約160kmの道のりが4~5時間も掛かる。
国境通関に3時間、ハノイまでの所要時間が5時間程掛かる為、通関が開く朝9時にトラックが到着し、午前中に通関手続きを済ませ、その日のうちにハノイへ貨物を配達するのが一般的な流れのようだ。
ハノイ到着が夜間になれば、その日のうちに配達完了出来ない為、翌朝まで国境の保税倉庫で待つ事になる。このように約2日を掛け、東莞からハノイまでの輸送が行われる。
< 運賃比較 >
運賃だけで比較をすると海上運賃はトラック運賃の約1/5。 発着地側の港湾費用等を加算しても約2/5となる。
しかし実際の海上輸送の所要日数をカット日から計算すると約1週間掛かる。 現状はやはり海上輸送の割合の方が多いが、突発的な納期への対応に輸送日数2日のトラック輸送をうまく使い分けるのも魅力である。
中国側は想像以上に道路状況がよく、スムーズに移動が出来たが、国境での通関手続きや、トラックの積替えには、まだまだ改善点がありそうだ。 又、ベトナム側の道路事情も問題が有り、これはベトナム政府が国防を優先しているからと言う噂もある。
中国からASEANへシフトする主な原因はやはり、労働者の賃金上昇・景気減速・反日デモや尖閣問題が大きいと言えるだろう。 先日の産経新聞の調べでは、中国の賃金を100とすると、フィリピンが77、インドネシアが70、ベトナムが44、ミャンマーが16となっていた。 今後の賃金上昇を見込んでも、まだまだ低いと言える。
又、日系企業はここ数年の間にフィリピンでの新工場設立、ミャンマーでは縫製、ベトナムでは電気・電子部品生産を中国から移管の動きが進んでいるとされている。
今後ますます中国へのリスクを考慮すると、更にASEANへの投資や発展に期待する企業も多いだろう。
次回は地図①の②ハノイ~ハイフォン間の赤のルートと、③ラオス・ビエンチャン~タイ国境までの緑のルートの道路インフラ事情について、弊社営業マンレポートを交えご紹介したいと思う。
-ASEAN メコン圏の物流インフラ事情と輸送コスト
【 I. 東莞~ハノイ編】 - 公開中
【II. ベトナム・ラオス編】 - 公開中
【III.東西経済回廊編】 - 公開中