今回はNSDで鉄製品の表面処理として行っているリン酸塩処理についてレポートします。
リン酸塩処理とは、金属表面に金属塩の皮膜を生成する化成処理の一つです。この処理方法について英国で特許を取得したパーカー兄弟の名前から「パーカー処理」、その後彼らの設立した会社が発売した処理時間を大幅に短縮した製品名(ボンデライト)から「ボンデ処理」とも呼ばれています。この処理が適用される主な用途は、塗膜密着性の向上及び塗膜下の腐食進行防止を目的とした塗装下地皮膜生成、金属の塑性加工の容易化を目的とした摺動性皮膜生成、金属表面に形成される皮膜層を利用した防錆皮膜としての利用です。
弊社では、鉄製OA機器用部品の表面処理として活用しており、主に防錆皮膜生成の目的でリン酸亜鉛系の二種類(PB-880、FT-7)のリン酸塩処理を行っています。
この処理により上記写真の結晶が金属表面に生成され、金属(鉄)が直接空気と接触する面積を減らす事が出来、防錆効果が期待できます。一般的にはこの状態で防錆油を塗布し生成された結晶の間に浸透させ、防錆効果を完全にするとされています。
しかしながら防錆油を塗布した場合、弊社での塗布工程及びお客様での除去工程が必要になると共に、防錆油の他部分への転移、汚れなど取り扱いの手間が増え、お客様、弊社双方にとってコストアップ要因となってしまいます。このため弊社では、現実的な方策として防錆油を塗布しない状態での製品提供を主に行っています。(2013年度の鉄製品通年出荷本数70万本に対し錆発生は14本、20PPMという実績です。)
防錆油塗布なしの状態では錆の生じる可能性ゼロではありません。そのため弊社では少しでも処理後完成品の錆発生を抑えるべく、以下の対応をしています。
① リン酸塩処理の内製化
リン酸塩処理工程を内製化し、これを自動化することで、低コスト化と品質の安定化を
図っています。
② リン酸塩処理前状態での在庫
当社では機械加工を完了した半製品状態で在庫し、受注後にリン酸塩処理を行う事
で処理から納品までの時間を短縮しています。
③ 完成品検査・在庫
リン酸塩処理後に直ちに温湿度管理されている環境に移動し、検査、Lot番号印字、
防錆油塗布(特別ご要望のある場合)、梱包の各作業を行ない、出荷までの間一時保管しています。
弊社では金属の切削・研削加工を伴わないリン酸塩処理だけの加工も承っております。
リン酸塩処理のためのラック寸法は、300(縦)x400(横)x520(高さ)㎜で、この寸法内であれば処置は可能です。是非、ご相談下さい。
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