ASEANの物流インフラ事情報告第1弾では、青色のルート中国東莞~ベトナムハノイを、第2弾では赤色のルートハノイ~ハイフォンと緑色のルート ラオス・ビエンチャン~タイ・ノーンカーイを報告した。
最終第3弾の今回はインドシナ半島の大動脈である、東西経済回廊を弊社営業マン2名が車を乗り継ぎ、2日半を掛け疾走した記録をご報告したいと思う。
まず東西経済回廊に関しての基本情報だが、東はベトナム第3の都市ダナンから西はミャンマー モーラミャインを結ぶ、全長1,450kmの道路の事である。とは言っても日本のように整備された道路ばかりではなく、まだまだ舗装されていない凸凹道があったり、牛や家畜が通る生活道であったりもする。
今回はその東西経済回廊の西端ダナン~タイとミャンマー国境のミャワディまでの道路インフラ状況をご報告したいと思う。
まずは左の表を見て頂きたい。
これは2日半を掛けて視察を行った、1時間毎の走行距離、片側車線数、10分間にすれ違った車の台数を表にまとめたものである。
1日目はダナンを出発し、ラオスに入り、タイとの国境近くの町サワンナケートまでの約520kmを移動。2日目はラオス出発後すぐにタイ国境を越え、ミャンマー国境手前までの約900kmを移動。
3日目はミャンマー国境までの約200kmの道程を、2時間ちょっとで移動。ミャンマーでは外国人の立入りが制限されており、今回は数時間のみの滞在となった。
それでは早速それぞれの道路インフラ状況を見て行きたい。
ダナンを出発して間もなくは舗装状況も良く、東西経済回廊唯一の高速道路やトンネルもある。 しかし、出発後2時間も経たないうちに山道に入り、道幅も狭く交通量が多くなる。(写真①)
この山道ではトラックのすれ違いも困難な状況であった。
その後国境までの200kmの間には、拡張工事が行われていたり、小さな町(写真②)や峠を通過しながら進んで行く。
出発から約5時間半後にベトナム税関に到着。 出国手続きを済ませ(写真③)、そこから数百メートル先のラオスの税関で入国手続きを済ませる。(写真④)それぞれの国境では、人もまばらで落ち着いた状況であった。
又、写真③と④を見比べて頂くと判るように、国境の建物も国によって異なっており、近代的なベトナムの建物に比べ、ラオス側は簡素で、のんびりとした雰囲気であった。
ラオスに入ると道路事情は急変し、未舗装の凸凹道が続き、車の数も減る。
(写真⑤) しかし、3時間程車を走らせると、ラオス第2の都市である、西部サワンナケートにあるサワン=セノ工場団地が見え始め、道路の舗装状況も良くなる。この工場団地にも日系企業が数社進出している。
この工業団地からベトナム ホーチミンへは460km、 ダナンへは500km。 又、バンコクへも約600kmと好立地。 更にラオスは電力コストが低く、積極的に誘致を行っている工業団地でもある。
この工場団地を越えた所で、第1日目が終了。
2日目は朝8時にホテルを出発し、すぐにラオス国境に到着。
写真⑥がラオス国境にある税関であるが、ベトナム国境側のラオス税関よりかなりしっかりとした建物であった。
ラオスでの出国手続きを済ませ、第2メコン友好橋を渡り、タイ国境へ向かう。前回のベトナム・ラオス編ではラオス北部のビエンチャン~タイのノーンカーイを結ぶ第1メコン友好橋をご紹介したが、今回は第一友好橋よりも250kmほど南東に位置している。
この第2メコン友好橋を渡るとすぐに、タイ国境の税関が見えてくる。(写真⑦)ここで入国手続きを済ませ、タイナンバーの車に乗り換える。
ASEAN内には各国間の車両規制が有る。ベトナム・ラオス間とラオス・タイ間はそれぞれ相互乗入れが可能だが、ベトナムとタイには協定がない為、ベトナム車両はタイでの通行が不可となる。
その為今回もベトナム車両とはここでお別れし、タイナンバーの車へ乗換えとなる。
因みにその他にも、タイ・カンボジア間、カンボジア・ベトナム間も相互乗入れが可能となっている。更に2013年の1月にベトナム・ラオス・カンボジアの3国間協定が締結されたが、通行許可書が必要となり、発行枚数も各国150台づつとかなり限定的で、今後の拡充が期待される。
タイ中部では車線の数も片側1車線から2車線となり、乗用車以外にもトラックやトレーラーの数も目立つようになった。この辺りには日本の自動車会社の看板も有り風景はさほど日本と変わらない。(写真⑧)
タイに入ってから500kmを過ぎると、峠道に入り道路も1車線となり、車両の数も一気に減る。
所々拡張工事を行っている箇所もあり、渋滞もあった。ミャンマーとの国境に近づいて来ると検問所が有り、写真⑨の検問所はタイ警察の検問所であるが、ミャンマー国境までに3つの検問所があり、3つ目の検問所はタイ軍の検問所となり、なんとなく物々しい雰囲気が漂って来た。これらの検問所は密輸防止や不法就労者を流出させない為とも言われている。
2日目はタイ西部の古都スコータイにて泊。スコータイは遺跡の町としても有名である。 所々拡張工事を行っている箇所もあり、渋滞もあった。
最終日3日目。 朝9時にホテルを出発し、国境を越え最終目的地のミャンマー・ミャワディーに向かう。
スコータイはタイの北西部に位置している為、ミャンマーとの国境ミャワディーまでは約2時間半弱の道程となる。
国境までは、比較的道路状況も良く、車の通行量も多い。 小さな町を抜け、拡張工事現場やタイ警察や軍の検問所(写真⑩)を通過し、順調に国境へ近づいて行く。
国境付近では、トラックの荷下ろしや積替え作業の様子が頻繁に見受けられる。 国境を越えたトラックが、道路上で積替えを行い、それぞれの場所へ配送されるのだ。
いよいよタイ側の国境ゲートに到着(写真⑫)。 出国手続きの車が列をなしている。
タイ側の国境ゲートを抜けた所で、車を置いて徒歩でミャンマー側へ向かう。 先にもお伝えしたように、ここでも車両規制があり、タイナンバーの車はミャンマーへの乗り入れが出来ない為である。
タイ側ゲートからモエイ川(写真⑬)を結ぶ友好橋を渡れば、ミャンマー側の国境ゲートが見えてくる。
ミャンマーへの入国にはビザが必要となる。 日本でも勿論ビザの取得は可能だが、ミャンマー入国時にアライバルビザを取得する事も可能である。
今回ミャンマーでの滞在は、ほんの数時間のみ。 営業マン1名はカナダ国籍で観光ビザにて入国。 もう一方の営業マンは日本国籍で、日本でのビザ取得を試みたが、ビザ発給センターでこの近辺は外国人立入り禁止区域なので、ビザを取っても意味がないと言われたが、写真⑭の国境ゲートで500バーツを支払い、一時入国が許可された。
一時入国はビザとは違い、国境ゲートでパスポートを預け、その日の17:00までに出国しなければならない。
パスポートはその出国の際に返却されるシステムである。
JETROの調べによると、首都ヤンゴンとその近郊以外は未整備道路が多く、走行中の振動も激しい。 特にミャワディーからヤンゴン間は山道が多く、うねりも激しい。 更に道幅も狭く、とても貨物輸送に適した道とは言い難い。このような山道では日替わりで上り、下りの規制をしている箇所もあるとの事だった。
ここで、第3弾に渡るASEANインフラ調査レポートは終了である。
中国東莞からベトナム国境を2日間に渡り掛けぬけ、国境での貨物積み替え作業を見学し、ベトナムハノイからは北部最大のハイフォン港を目指し、ラオスビエンチャンからタイへは第一メコン友好橋を渡った。
そして、今回は1,600kmに渡り東西経済回廊を、車を乗り継ぎながら調査を行った。
ご覧頂いたように、成長著しいと言われるASEANだが、まだまだ未整備な箇所も多く課題もある。
道が細くトラックがすれ違うのも困難な山道や、舗装されていない凸凹の道路では精密部品を輸送するには適していいない。 これらのハードインフラだけでなく、各国間での車両規制や、通関手続きの効率化等のソフトインフラ面でも数多く指摘されている。 今後、ビジネスでもっと拡大するにはこれらの課題を一つづつ解消して行く必要があると言えるだろう。 しかし、インフラ以外に目を向ければ、労働力の若さ、賃金の低さ、EPA・FTA等で関税撤廃や免除等、メリットも多数ある。 現在世界で最も勢いがある地域の一つに数えられ、様々な可能性があるであろうASEANを、今後弊社としても注目して行きたい。
-ASEAN メコン圏の物流インフラ事情と輸送コスト
【 I. 東莞~ハノイ編】 - 公開中
【II. ベトナム・ラオス編】 - 公開中
【III.東西経済回廊編】 - 公開中