「アルミか鉄か?」様々な部品開発の御相談を頂く際に、設計段階でこう言った質問を受けることがあります。
そもそもアルミと鉄とは強度、加工性、耐食性や、もちろんコストなどなど、様々な違いがあり一概にどちらが良いとはお答えできません。
弊社の場合、結果として鉄やステンレスよりもアルミニウムを御採用になるお客様が多いようです。今回はアルミニウムの材料選定における基礎知識について御紹介させていただきます。
アルミニウムは鉄の約35 %の比重であり軽量で利用しやすい材料です。電気導電性は良好で、表面に形成される酸化皮膜のために耐食性もあります。
熱を伝えやすい特性を生かして、熱交換器、エンジン部品、冷暖房装置などにも利用されています。
金属の熱伝導率は、①銀(428)、②銅(403)、③金(320)④アルミニウム(236)の順で鉄は(84)、ステンレスは(17~21)程度です*。(ちなみに空気は0.0241で水は0.582)*(W/m K)いずれも参考値
一般的な金属材料で熱伝導性を要求する場合はアルミニウムが最適です。
アルミニウムはアルミ缶などの容器、家電製品などの筐体からアルミサッシのような建材まで、実に様々な用途で利用されていますが、1円硬貨のようにアルミニウム100 %のものは稀で、殆どの場合はアルミニウム合金が使用されています。
アルミニウム合金は、アルミニウムの軽量さ、加工のしやすさを活かしつつ、強度など各用途で要求される材料特性を改善したもので、幅広い分野で利用されています。
アルミニウム合金には展伸材(圧延、押出し、引抜き、鍛造などの塑性加工によって造られた板、条、管、棒、線材など)と鋳造材の2種類があります。弊社が主に加工する材料は展伸材です。
展伸材には非熱処理型合金と熱処理型合金があります。それぞれの特徴と用途例は以下の通りです。
アルミニウム合金の特性は、添加される元素の種類と量によって変わります。要求される材料特性、加工性、コストの観点から最適な材料を選定下さい。
一般に、中程度の強度をもつ材料としてもっとも利用されているのは5000系です。
更に、より熱伝導性が良好で強度が優れている材料としてCM10やYM3007などと言った特殊材料もあります。
求める形状により、様々な加工法があります。但し加工法により材質が限定される場合もございます。
以下は弊社で取り扱っている材料の例です。
1)パイプ押出材料 A6063、A5052、A5056、CM10、YM3007他
*中国ではポートホール管のみとなります
2)異形押出材料 A6063
3)引抜き材料 A6063、A5052、A5056、CM10、YM3007他
アルミニウムは表面に形成される酸化皮膜のためにそのままでもある程度の耐食性があります。
表面に耐摩耗性や絶縁層を設けたい場合はアルマイト処理が一般的です。
更に高い硬度を必要とする場合は硬質アルマイトがあります。
ボーイング787の機体には、アルミニウム合金に変わって炭素繊維複合材が採用され大変話題となりました。軽く、高強度の炭素繊維複合材は自動車などを含め今後の用途拡大が期待されます。
しかしながら、入手性・加工性・コストを考慮しますと、アルミニウム合金の優位はまだ当分の間続くでしょう。