**近距離海外輸送と遠距離輸送、そんなに大きなコスト差?**
遠い海外から海上輸送した場合の費用も国内の運送費もさほど変わりない事や、日本から約6,000km離れたアメリカからの輸送費と、1,000kmほどのアジアへの輸送費がほとんど変わらない事はご存知でしたか? 又、輸入時の港費用が意外にも高く海外輸送費の30%~50%を占める事はご存知でしたか?
海外取引に欠かす事の出来ない運送経費ですが、今回は意外と知られていないこう言った内容を含め、国内生産と海外生産のメリット・デメリットについて紹介させて頂きます。
まずは身近な1.5Lのペットボトルを例に、日本・香港・上海・アメリカから1パレット・10パレット・20FTコンテナで輸出入した場合に掛かる海上運賃と現地諸費用を算出してみました。 1パレット単位で輸出した場合の製品1本当りのコストは160円~270円。 しかし、20FTコンテナで輸出した場合の1本当りのコストは21円~74円程度です。 使用するForwarderや倉庫業者によって若干の費用の違いはあるものの、海外から輸入するとそれなりの費用が掛かると想像しがちですが、意外にも1本当り数十円のコストで済むものです。
Carton Size : 27 x 36 x 33(cm) / 18.0kg (12本/カートン)
Pallet Size : 100 x 120 x 114(cm) / 24カートン (8カートン x 3段積み)
100 x 120 x 82(cm) / 16カートン (8カートン x 2段積み)
*1パレット(288本) : 450kg / 1.368M3
*10パレット(2,880本) : 4,500kg / 13.68M3
*20FTコンテナ(4,800本): 7,200kg / 23.52M3 **3段積みと2段積みのパレットにて出荷**
もう少し詳細を見て行きますと、先にも述べたようにアメリカからアジアへ輸出した場合のコストもアジア間で輸出した場合のコストもさほど変わらないと言うのは面白いポイントです。 アメリカ-アジア間に対しアジア間は距離的にわずか1/5~1/6程度にも関わらず、運送費様はほぼ同じです。
ただ逆にアジアからアメリカへ輸出する場合は2割~3割高くなり、これは一般的にアジアからの輸出貨物に対しアメリカからの輸出貨物が少ない為、海上運賃が低く設定されている事が理由だと言われています。 距離よりも競争原理の方がしっかりと効いているようです。
又、意外にも各拠点での輸入時の港費用が高く、1パレットの場合は総経費の50%以上、20FTコンテナの場合でも30%以上を占めます。
こちらも海外運送の場合と同じ条件で日本・香港・上海・アメリカへの国内運送コストを見積もってみました。 今回は100km(大阪~関ヶ原程度)と比較的短い距離での費用となりますが、それでも1パレット単位での1本当りのコストは23円~74円、10パレット単位であれば3円~49円となります。
先に確認しました海外運送費用の21円~74円に対し、国内運送費用は3円~49円。 1本当りの差は18円~25円と、海外からの運送コストも国内運送コストも思った程の差がない事が判ります。 これを300km~500kmの距離で算出すれば、恐らく海外運送費用とほとんど変わらなくなるのではないでしょうか?
又、上記の表でもご覧頂ける通り、中国国内のトラック費用は格段に安いのですが、荷扱いが荒く、日数も掛かるというデメリットもあります。 そのリスク回避の為、ほとんどの会社は追加費用を払って、自社でトラック手配をしているケースが多い様です。
海外と国内の運送コストを比較させて頂いた通り、国内運送の場合も海外からの輸入の場合もさほど大きな違いはありません。 材料コストや人件費の安い海外で生産すれば、その差は十分にクリア出来、更なる可能性も見込めるのではないかと思われます。 ただ、ご存知の通り海外からの輸入の為、輸送リードタイムが長かったり、不良品に対する代替品対応に時間が掛かったり等問題点もありますが、ある程度の需要計画を立てる事で輸送日数や不良数を踏まえた発注も可能となり、問題解消にも多少貢献すると推測します。 又、外貨での取引の場合は為替リスクが必ず付いて回りますが、今後の景気を見越した見積価格の提出や、銀行への為替予約等でリスクを軽減する事も多少は可能なのかもしれません。
ここ2、3年中国での賃金は17~18%程毎年上がっており、中国を海外生産の主拠点としている日本の製造メーカーは、より競争力のある地域を探して生産地を移そうと動いています。 しかし、アジア間の輸送経費とアメリカ・メキシコからの輸送経費がそれほど変わらないのであれば、インフラ未整備の国で苦労するよりはもう一度北アメリカに目を向けるのも一案かも知れません。 輸出先としては一番大きな消費地であるアメリカに近いというメリットと、長いリードタイムと言ったデメリットをどう考えるかですが。
他にも現地での雇用問題等もありますが、以前の弊社のコラム「中国とメキシコの労働事情」をご一読頂き、ご参考にして頂ければと思います。