ASEANに進出している企業の多くが頭を悩ませている、ASEANの物流インフラ。成長を続けるASEANと同様に、物流インフラも日に日に整備拡充されてきています。
本稿では、ASEANの物流インフラの現在の状況をご紹介いたします。
■ベトナム北部インフラニュース
ハノイ~ハイフォン間高速道路が全線開通
ハノイ市環状道路3号線から紅河デルタ地方ハイフォン市ディンブー港までを結ぶ、ハノイ~ハイフォン間高速道路が2015年12月5日、全線開通しました。
この高速道路は全長105.5kmで、2015年5月に22.7km、9月に52.5kmの区間が開通していました。今回残りの区間が開通したことで、2008年5月の着工から実に7年半にわたる長期の工事を経て、ようやく全区間が完成したことになります。
これまでハノイ~ハイフォン間は車で約2時間30分~3時間ほどを要していましたが、この高速道路を使えば、約1時間30分~2時間に所要時間が短縮されます。
道路は本当に綺麗でまだ車の数も少なく、渋滞のストレス無くハイフォンまで行くことが出来たというのが、実際に高速道路を使った感想です。しかし、高速道路を降りてからのインフラがまだまだ未整備という印象を受けました。またインターチェンジが少なく、ハノイ~ハイフォン間に点在する既存の工業団地群からのアクセスが良くないというのも実情です。
インターチェンジの増設やインターチェンジからハノイ市内、各工業団地などへのアクセス道路の確保によって、この点を解消していくことが今後の課題と言えるでしょう。
ラックフェン港
ベトナム・ハイフォン市ディンブー工業団地の輸送インフラとして建設中のラックフェン国際港、タンブー~ラックフェン高速道路が2017年に完成する見込みです。日本のODA投資によるこの港と高速道路は、ディンブー工業団地への海と陸の連絡路となります。ラックフェン港はベトナム北部ではこれまでで最大規模の港で、総投資額は25兆ドン(11億7000万ドル)、5万~10万DWT(積載重量トン)クラスの船舶が停泊できる規模の港となる見込みです。
ラックフェン港の開港によりベトナム北部と欧米地域が直接結ばれ、輸出入にシンガポールや香港を経由する必要がなくなります。これにより輸送コストの大幅な節減が期待できる上に直接物流網の構築が可能になる為、ベトナムの国際競争力を高めるプロジェクトの一つとなっています。これを裏付けるように、ディンブー工業団地には日本郵船、日本通運、商船三井(MOL)、SITCなどの物流大手が既に拠点を設置しました。
ハイフォン市ハイアン区とラックフェン港間15.63kmを結ぶタンブー~ラックフェン高速道路は、総投資額118500億ドン(5億5600万ドル)で、17年5月完成予定です。同高速の途中には、東南アジア最長の5.44kmにわたる海上橋のタンブー橋も架かります。
団地を運営するディンブー工業団地株式会社は、今後2000ヘクタールまで規模を拡張することを計画しています。
日本のODA投資によるこのラックフェン港、高速道路はベトナム政府としてはTPPと絡め、更なる経済発展の起爆剤としたい意向と思われます。
■クロスボーダー輸送
ハノイ~タイ 輸送ルート
第3メコン国際橋は 2011年11月にナコンパノム(タイ)とタケーク(ラオス)の間に開通しました。東西経済回廊より110km北に位置し、ベトナムとの国境(ラオス側はナパオ)からベトナムの国道1号線上の都市ホンリンに通じ、タイからハノイまでの陸上輸送ルートを形成します。
これにより、バンコクとハノイ間の最短ルート(1,330km)が利用可能になりました。東西経済回廊(第2メコン国際橋・国道9号線経由)を使う従来のルート(1,575km)に比べて距離は約250km短縮されましたが、現状では「タケークにタイ・ベトナム車両の積み替え施設がない」「山道の区間が多い」「2006年12月に完成した第2メコン国際橋をはじめ、日本の資金拠出がメインとなった東西回廊を利用すべき」といった理由から、国道12号線を通るこの最短ルートをメインの輸送ルートとして採用するケースは少ないのが実情です。
2015年2月ラオス政府は、同国中部カムムアン県とベトナム北中部クアンビン省を結ぶトンネルの建設計画を明らかにしました。アンナン(チュオンソン)山脈を横断する全長15kmの同トンネルは、ラオス国道12号線(ASEANハイウェイ131号線=AH131)建設案件の一環として展開されるものです。
ラオス公共事業交通省の責任者は、「AH131の最終区間の約15kmは険しい地形となっているため、トンネル建設が必要。両国間の交通状況の改善にもつながる」と述べています。同省は現在、日本と協力してこれに関する予備事業化調査(プレFS)を実施しています。なお、AH131案件では、同県タケーク郡からベトナム国境までを結ぶ全長147kmの道路を建設します。このトンネルが開通すれば、第3メコン国際橋を使用した最短ルートにて、東西経済回廊の場合よりも早くタイまで輸送が出来るうえ、険しい山間を通らずに済むというメリットもあることから、今後はこのルートが採用されるケースが増えると予想されます。
ここまで述べた様に、ベトナム国内外の物流インフラは着実に整備拡充が進んでおります。しかし、未だ満足出来る状態ではありません。
今後も当社は、ASEANに展開している、又は展開を検討している企業様に有益な情報を定期的に配信していきます。次回は、クロスボーダー輸送の問題点をお伝えします。