高い経済成長を見せるASEAN。好景気に伴い人件費が高騰し、企業は人件費を上回る経営効率化に迫られています。
原材料・部品の現地調達や設備の現地化はASEANに進出する企業にとって重要な課題の一つです。今回はASEANの現地調達の最新状況や取り組みを紹介します。
■ ASEANの課題
図①は2015年度のアジア・オセアニア地域の原材料・部品の調達状況です。
弊社海外拠点があるベトナムを例にとると、現地企業からの調達率は32.1%となっており、近隣諸国のタイ(55.5%)、インドネシア(40.5%)に比べて低く、中国(64.7%)と比べると半分程度に留まります。これは、ベトナム現地における裾野産業が発展途中であり、競争力が未だ弱いことを証明しています。他のASEAN諸国(フィリピン、ラオス、カンボジア)を見ても現地調達率は低く、裾野産業の発展はASEAN全体の課題であると言えるでしょう。
■ ASEAN裾野産業の現状
ASEAN先進国であるタイの現地調達率は55.5%とASEAN内で最も高く、産業集積が進んでいる事が見てとれます。しかしながら、インドネシア(40.5%)以外のASEAN諸国の現調率は40%を切っており、カンボジアに至っては9.2%と原材料・部品調達の殆どを輸入品に頼っています。また、ASEANに進出している外資企業の多くが、現地裾野産業の情報が乏しいことを理由に、最終製造工程のみを現地で行う現状があります。
輸入品を使用することで生産コストが上がり、市場競争力は弱まります。更に外資企業は上記の理由により現地企業との交流・投資が少なく、結果として現地企業が成長する機会が失われています。市場競争力があり地理的にも近い中国の影響も、裾野産業の育成を阻害する要因の一つと言えるでしょう。
■ ASEANの取り組み
2015 年11 月、ベトナム政府は中小企業に対する優遇方針を示す新たな政令を公布しました。これはベトナム政府による裾野産業の育成を促す政策ですが、他のASEAN諸国でも裾野産業の育成には力を入れており、政府レベルでこの様な優遇策による支援を行うことで、産業育成に取り組んでいます。効果が現れるには今少しの時間を要すると思われますが、裾野産業の発展を期待しています。
また、企業レベルの例として弊社の取り組みを少しだけ紹介します。弊社の行動指針に「適材適所」という言葉があります。“適切な’材料を適切な場所で調達する”という考えのもと、弊社ベトナム工場では、現地企業と協力開発を推進し現調率100%を達成しています。今後も企業同士の積極的な交流を通して、現地企業の育成に働きかけていきたいと考えます。
チャイナ・プラス・ワンで注目されているASEANですが、中国に匹敵する生産拠点となるには未だ時間が必要であると考えられます。裾野産業の発展を期待しつつ、今後も引き続きASEANの動向を探り報告していきます。
参照図:・2015年度 ジェトロ調査