2011年10月 - コロラドスプリングス(コロラド州)より
MINCO社より、少孔質フッ素ポリマーコーティング技術をご紹介します。この技術は液体ならびに粉体タイプがございます。液体の場合の総膜厚は15~75μm、粉体の場合は25~150μmです。
液体では導電性ものも可能です。
従来のスプレー機器を使用して噴霧するフッ素ポリマーコーティングの場合、必ず一定レベルの気孔が入ります。スプレーガンの先端で噴霧する際にコーティング剤が液滴となり表面に堆積します。気孔が入らない皮膜にするためにはコーティング剤が溶融流動する必要があります。高温環境(華氏680℃、摂氏360℃)になるとフッ素ポリマー樹脂は溶融流動します。PTFEは熱硬化性のため溶融流動しません。PFAやFEPは熱可塑性のため溶融しますが、それ自体では気孔の無い膜にはなりにくいです。よって気孔を作らずにコーティングするためには何層にもコーティングを塗布した後、焼成する処理が必要です。前記の熱硬化性のためPTFE層は何層も重ねることは不可能です。(重ねたとしても各層間の結合は弱い。)
下図はレーザースキャン顕微鏡による新コーティング技術と従来のフッ素ポリマーコーティングを比較した画像です。
- 図1、3は“non-porousコート”で、図2、4の従来技術と比較しています。
- 図1、2は気孔の深さを比較した断面図。図3と4は表面スキャンの比較です。
“non-porousコート”はシリコンオイルを使用するローラーにおいて利点があります。シリコンオイルを使用するローラーにおける問題点は、シリコンオイルが気孔を通じて皮膜に浸透し、プライマー層に達してコーティング層と芯金間の剥離の原因になることです。このような剥離は事前予測がつきにくく、製品寿命を短くする要因となります。“non-porousコート”であればシリコンオイルの浸透を防ぎ製品寿命に影響を与えません。
フッ素ポリマーの場合、それが少孔質のフィルムの場合は絶縁耐力は4,000-6,000V/milです。気孔がある場合は電流がコーティングを突き抜け通電します。“non-porousコート”ではその可能性が低くなります(伝導コーティングは対象外)。
多面形状のもので気孔を避けたい場合、フッ素系ポリマーフィルムで被覆することは困難ですが、コーティングであれば容易です。
離型性において当コーティングは従来のPFAコーティングの代替品となります。接触角度は110°~125°です。
MINCO社は、シリコンゴムのフッ素ポリマーコーティングに関する特許技術を有しています。ある種のシリコンゴムローラーでは、紙がローラーから剥離しやすくするためオイルを塗布していますが、この際、オイルがシリコンに浸透してシリコンが膨張し不具合の原因となることがあります。その対応として、これまではスリーブを被せたり、バイトン®コーティングが施されていましたが、その構造上、スリーブでは両端面を密閉できないのでローラー両端からオイルが浸透し始めます。バイトン®コーティングは両端密閉可能ですが、生産コストが高く、フッ素ポリマーコーティングほど離型性はございません。Minco社の少孔質コーティングは両端密閉が容易かつPFAスリーブと同等の離型性を有しております。